2012年06月18日

講演会参加報告:読ませる翻訳とは?

 6/16(土)、小雨の降りしきる中、青山学院大学で行われた日本通訳翻訳学会主催の講演会「小説における英文和訳と翻訳の違い」に参加しました!講師は中野康司(なかの・こうじ)・元青山学院大学教授。英国人作家J.オースティンの長編小説6作品の個人全訳などで知られる方です。

 配布資料をパッと見て、「これは面白い!」と期待値が上がりました。『ハリー・ポッター』シリーズや『ダ・ヴィンチ・コード』、そして中野先生も手がけた『高慢と偏見(Pride and Prejudice)』等々から抜粋した原文と、まずそれに沿った直訳的英文和訳、そして日本語訳として出版された本からの該当部分の訳が併記され、比較検討できる形になっていました。『ハリー・ポッター』と『ダ・ヴィンチ・コード』はいずれも日本で大ベストセラーとなった数少ない翻訳本です。なぜ売れたのか。それはまぎれもなく、読みやすいからです。そして『高慢と偏見』は、英文学として最高峰の知名度がありながらも、日本では文学専攻の学生の間ですら普及していないという現実を省みて、現代語訳として訳すことを特に意識したという先生の訳文が、数ある翻訳本の訳文と比較できるようになっていました。

高慢と偏見-horz.jpg

 先生のお話の要点はこのようなものでした。
@ 人間や物の動きを順を追って伝えていくような訳だとわかりやすい。このためには、原文を訳し下げていく(頭から訳していく)ほうがいい
A 作品全体を俯瞰しながら、個々の訳で説明を補うことの重要性
B どこまで「親切」な翻訳をするか。

 ハリポタやダヴィンチが目指した子どもでも理解できるような本にするには、@は欠かせない要素です。翻訳本では一ひねりも二ひねりもして、頭に情景が浮かぶような工夫がされています。

 Aは作家の五木寛之氏が手がけた翻訳を例にして、作家だからこそ描こうとした、作品をより深く理解する上で欠かせない、原文にはない補足を紹介しています。

 Bは村上春樹氏の言葉「翻訳とは親切心がものを言う作業だ、と僕は思っている」が具体的に示すものはどういうことか、またどこまで現代語を古典訳に取り入れるかなども含めて、訳者としての先生の考えを実際の訳を比較しながら説明していただきました。

 学生からも大人気だったという中野先生の授業はこのようなスタイルで、具体的に翻訳のイロハを教えていくそうです。羨ましい!

 ただし中野先生は、「これはあくまで小説においての見解。論文やその他正確性が必要とされる翻訳はまた別の話」という前置きもありました。

 
 ほかにも、「訳すと能動体と受動体が原文と訳文で半分位は逆になる」や、「原文の過去形の羅列をそのまま訳すと大変なことになる」など、たくさんのキーワードが出てきましたが、ここではご紹介しきれずにすみません!!

 今回のお話を聞いて早速自分の翻訳に生かしてみたいと思った反面、これまでの自分の無頓着さに赤面。専門がどの言語であれ、翻訳家の悩みは共通していることを改めて感じつつ、お洒落な格好で街を闊歩する人たち以上に晴れやかな気分で青山を後にしたのでありました♪(RAN)
posted by Rita at 23:12| Comment(0) | イベント・セミナー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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