2011年04月23日

日本でスペイン語学習を活かす 〜在日ラテン人との交流〜 その3

みなさん、こんにちは!

全4回にわたってお送りする「日本でスペイン語学習を活かす〜在日ラテン人との交流〜」シリーズ。これまで大竹さんには、愛知県保見にある「ことばの教室」に入ったきっかけから、教室の構成、実習の内容に至るまで、詳しく教えて頂きました。今回3回目は、大竹さんが実習現場を通して知った、外からはなかなか見ることのできない外国人児童の抱える問題や事情について聞いてみました!

田村:大竹さん、今までのお話を伺っている限り、「ことばの教室」での実習は盛り沢山で、とても充実していたようですね。新たに得たことも沢山あったのではないでしょうか。


大竹さん:それだけに充実した実習でしたが、「楽しかった・いい経験だった」だけでは終われない面もありました。ここで私が得たものは、日本語教師としての経験や技術ではなく、むしろ外国人たちの現状と問題について知る機会でした。

田村:外国人の現状と問題ですか。彼らと実際に接する機会がないと、なかなか知ることができないですよね。では、大竹さんが見たケースを具体的に教えて下さい。

RITA-大竹さん第三回

写真:大竹さんが一年間の実習の最後に受け取ったプレゼント。思い出の写真と手紙。


大竹さん:ある日、教室に小学校6年生の女の子が入ってきました。彼女は生後間もないころから日本に住んでいたそうなのですが、親が「日本の学校に通わせるとお金がかかる」と思い込んでいたため、6年生になるまで一度も学校に通ったことがなく、毎日家で下の兄弟達の世話をしていました。最近になって、義務教育期間であれば学費などはかからないという話を親が聞き、6年生になって初めて小学校に通う事になったのです。しかし彼女にとって、学校で勉強をしたり、大勢の他の子供たちと過ごすのは初めての経験でしたので、最初は集団生活にも戸惑っているようでした。年齢的には6年生でしたが、ひらがな・カタカナの読み書きや、2年生程度の計算(掛け算など)から勉強を始めました。

田村: 小学6年生まで学校に通わせてもらえなかったなんて、正直驚きました。外国人家庭では、そんなことが起きているんですか。

大竹さん:保見地域では、学齢期の外国籍の子供たちが平日の昼間(学校がある時間帯)に、団地の公園や広場などで遊んでいる姿を見かけることがあります。いわゆる、義務教育を受けていない子供たちが結構いるのです。学校や行政側も「外国人であるから義務教育を受けさせる義務はない」という理由から、不就学児の問題にはあまり積極的ではありません。

田村:日本の義務教育は、外国人だと義務ではないんですね。それにしても、外国籍という理由で、学校や行政が不就学問題に乗り出さないとは、日本人として少し残念な気がします。他にはどういったケースがありましたか?

大竹さん:「家でご飯を食べたことがない」という中学生の男の子がいました。詳しく聞いてみると、朝食はいつも抜き、お昼は学校の給食、夜は家に置いてあるお金を持って近くのコンビニなどに行き菓子パンを食べるため、家で食事をしないということでした。この子の場合も親が仕事で忙しくあまり家にいないため、食事の用意ができないのです。中学生の男の子と言えば育ち盛りの食べざかり、栄養のあるものを十分食べるべき時期ですが、この子の場合は学校の給食が唯一の栄養を考えた食事でした。この子は、いろいろな都合で教室に来られない日も多かったのですが、先生方は「給食を食べるためにだけでもいいから来てほしい」と嘆いていました。

田村:家で食事をしたことがない子までいるんですか。この男の子のようなケースはそう多くあって欲しくないですが、実際のところはどうなんでしょうか。

大竹さん:この子の例に限らず、親が二人とも無理をして夜勤をしたり、休日返上で働いているため、子供の教育にエネルギーを注げない家庭は多くありました。これは、外国人児童に限らず、日本人の子供たちも抱えている問題でしょう。

田村:確かに、言われてみればそうですね。

大竹さん:しかし、より安い賃金で働いているうえ、そのお金を貯金したり、少しでも多く母国に仕送りしたいと考えている外国人家庭では、より深刻です。日頃親と十分にコミュニケーションのとれない子供たちは寂しさからか、学校で先生に甘えたがったり、注目してほしいがために拗ねてみたり、悪戯してみたりすることもありました。

田村:なるほど。外国人児童が抱えている問題は、在日外国人労働者が置かれた厳しい環境や事情からきていることが分かりました。ただ、罪のない子供たちに社会のしわ寄せが行ってしまうとは、なんともやりきれない気持ちです。こういった問題が起きないためには、どうすればよいのでしょうか。何か解決策はないのでしょうか。次回はいよいよ最終回、大竹さんに問題の核心に迫ってもらいます!お楽しみに☆


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2011年04月16日

日本でスペイン語学習を活かす 〜在日ラテン人との交流〜 その2

みなさん、こんにちは!
最近、大分暖かい日が増えてきましたが、いかがお過ごしでしょうか。
前回は大竹さんに、外国人児童に日本語を教えることになった経緯について、お話を伺いました。今回2回目は、大竹さんが実習に行った愛知県の保見にある「ことばの教室」について、どんなところだったのか詳しく聞いてみました。


大竹さん:「ことばの教室」には常時10~20人ほどの子供たちがいます。年齢は6歳から14歳。私が実習に通っていた年には、ブラジル、ペルー、ボリビア、フィリピン、韓国からの子供たちが通ってきていました。それに対して、子供たちを指導する先生は3人、それぞれスペイン語、ブラジル・ポルトガル語、日本語を母語としていました。この3人の先生が、小学1年生から中学生までの十数人の子供たちを指導します。しかし子供たちは、それぞれ母語も国も年齢も学力も違い、また日本に来た時期も日本語の能力も異なるため、普通のクラスのように皆で効率よく同じ勉強をするという事はできません。それぞれの学年・言語能力にあわせた指導が必要です。また、子供たちが教室に入ってくる時期も通年ばらばらなので、本来なら3人の先生ではとても足りません。

RITA-ことばの教室

写真:「ことばの教室」にて、中央が大竹さん

田村:確かに、そこまで個人差があると先生3人だけでは全然足りないですよね。となると、どうやって対応されていたのですか?

大竹さん:例えば「にほんご」の時間には、年齢に関係なく日本語の習得度に合わせて、上級・中級・初級の3グループに子供たちを分け、できるだけそれぞれのレベルにあった指導ができるようにしました。次の「さんすう」の時間になると、学力と学年別にまた3つのグループに子供たちを分けそれぞれ指導するなど、できるだけ目的に合わせて効率的に学習を進める工夫がされていました。なので、「にほんご」の時間には、日本語のうまい小学校低学年の子が中学生のお兄さん・お姉さんに日本語を教えたり間違いを指摘したり、逆に「さんすう」の時間には、年長者が年下の子供たちに計算を教えたりと、年齢に関係なく子供たちには自然と助け合う雰囲気がありました。

田村:子供たちの間で、年齢に関係なく自然に助け合う雰囲気ができるなんて、なんだか微笑ましいですね。ところで大竹さんは、この「ことばの教室」でどんな役割を担当されていたのですか?

大竹さん:私の役割は、分からない問題で困っている子がいたら、ヒントを出したり、例題を出して学習の手助けをしたり、グループ分けされた中でも特によくできる子、もしくはできない子の個別指導をしたり、という補助的なものでした。とは言っても、教職免許を持っているわけでもなければ、小学校で教える練習をしたこともない私です。この面ではろくに役に立たなかったどころか、逆に先生方の足手まといになっていたように思います。代わりに私が力を入れていたのは、休み時間や給食の時間のコミュニケーションでした。

田村:コミュニケーションも大事ですよね。でも、「ことばの教室」に通う子供たちは、日本語が十分でないと思いますが、どうやってコミュニケーションを取られていたのですか?子供たちの母語もそれぞれ異なりますよね。

大竹さん:スペイン語は専攻していたのである程度はできましたし、ポルトガル語も少しですが大学で習いました。英語ができる子たちとは英語で話しながら、一緒に校庭を走り回って騒いだり、雨の日には教室で折り紙や塗り絵、かくれんぼをしたり。悩みや愚痴を聞いたりけんかの仲裁をしたりしたこともありました。「先生」にはなれない私ですが、「一緒に遊んでくれて話を聞いてくれるお姉さん」にはなれたようでした。

田村:スペイン語とポルトガル語、英語の3言語でコミュニケーションがとれるなんてすごいですね!愚痴や悩みを聞いてくれる大竹さんは子供たちにとって、とても心強い存在だったと思いますよ。

大竹さん:子供たちは日頃何か伝えたいことがあっても、日本語でうまく表現できないというストレスを抱えています。私と走ったり話したりすることで少しリフレッシュして、次の学習に向かえるようになればいい、と自分の存在意義を考えるようになりました。

田村:外国人児童にもこういった形のストレスがあるなんて、大竹さんのように実習を体験してこそ、初めて分かることですよね。次回は、子供たちが一体どんな悩みや問題を抱えているのか、詳しく伺いたいと思います。お楽しみに!



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2011年04月09日

日本でスペイン語学習を活かす 〜在日ラテン人との交流〜その1

みなさん、こんにちは!

震災後、外国人被災者の皆さんが通訳・翻訳者のサポートを求めている一方、在日ラテン社会の皆さんがチャリティーイベントで日本を応援して下さっています。非常事態の時こそ言葉が命綱になりますが、私たちがスペイン語を学ぶことも、外国人の皆さんが日本語を学習することも、どちらも大事ですよね。さて、今回は、大学の実習を通して日本のラテン社会に関わったご経験を持つ、大竹亜希子さんにインタビューすることができました!

田村:大竹さんは愛知県の大学時代に、外国人児童に日本語を教えたご経験があるそうですね。愛知県には、大人だけでなく子供まで、そんなに多くの外国人が暮らしているのですか?


大竹さん:愛知県にはブラジルやペルー、フィリピンなどからの日系の人たちが多数住んでおり、その数は全国でもトップとなっています。その多くは、自動車メーカーの「トヨタ」関連企業で働く工場労働者です。ところによっては、住民の約半数が日系の人たちで構成されている地域もあります。

RITA-保見地区の位置2
田村:日系人が約半数の地域があるんですか! ところで大竹さんは、大学でスペイン語を専攻されていたそうですね。外国人に日本語を教えるということは、スペイン語学習の方向とは違うように思えますが、何かきっかけなどあったのでしょうか?

大竹さん:私が通っていた愛知県立大学には「日本語教師養成課程」がありました。これは主専攻とは別に副専攻として「日本語教師養成課程」を履修できるというものです。「日本語教師養成課程」は、3〜4年間の関連講義と最低1年間の外部実習によって構成されています。私はスペイン語専攻だったのですが、「同じ授業料を払って4年間勉強するのなら、できるだけたくさんのことを学びたい」と思い、この課程をとることにしました。

田村:できるだけたくさん学ぼうというその精神、素晴しいですね! では、その「日本語教師養成課程」について、もう少し詳しく教えて下さい。

大竹さん:「日本語教師養成課程」最後の仕上げは、一年間の外部実習です。実習先は、語学研修センターや地域の日本語教室、小学校の特別教室、大学の留学生向け日本語クラスなどなど。バラエティーに富んだ中から各自自由に実習先を選び、一年間活動します。私はちょうど実習の前の年にラテンアメリカへ留学し、ペルーの孤児院や母子支援施設でボランティアをしていたので、先生から「その経験とスペイン語を活かしなさい」と勧められ、豊田市の東保見小学校につくられた特別教室「ことばの教室」に行くことにしました。

田村:それまでの経験とスペイン語を活かせる実習なんて、絶好の機会ですよね。ところで、大竹さんが選んだ「ことばの教室」のある豊田市の東保見小学校も、外国人が多かったのですか?

大竹さん:保見は、愛知県の中でも特に日系の人が多く住んでいる、全国的にも有名な地域です。この地域にある東保見小学校は、児童の半数以上が外国人児童です。保見に住んでいる人たちの出身は、ブラジルが最も多く、次いでペルーなどのラテンアメリカ、フィリピン、中国などとなっています。保見には、ブラジルやペルーの商品を主に扱うスーパー、ブラジル料理・中華料理店などが多くあり、ほとんどブラジル・ポルトガル語とスペイン語が公用語(!?)になっていると言っても過言ではないような雰囲気があります。

田村:保見地区は、まるで外国みたいですね(笑)

大竹さん:そんな保見にある東保見小学校の中に、私が実習先に選んだ「ことばの教室」はありました。「ことばの教室」とは、初めて日本の小学校・中学校に通うことになった子供たちが、日本語や日本の学校のルールなどを学ぶ、全国でも珍しいJSL(Japanese as a Second Language)クラスです。小学校区からだけでなく、豊田市の全地域から子供たちが通ってきていました。小学校1年生から中学生の子供たちが毎日通い、1時間目から5時間目まで同じ一つの教室で机を並べて学習します。授業内容は「にほんご」「もじ・かんじ」「さんすう」などです。子供たちはここで日本語と学校のルールを身につけ、原学級(本来所属すべき学校のクラス)でなんとかやっていけるレベルになったと判断されると「卒業」します。入ってきた時の日本語力や学力にもよるのですが、「卒業」までだいたい4〜6カ月くらいかかります。

田村:子供といっても、年齢層も授業内容も幅広く、学力も様々となると、対応はかなり大変だったのではないでしょうか? 次回は、大竹さんの実習現場「ことばの教室」はどんなところだったのか、もっと詳しく聞いてみたいと思います。次回をお楽しみに!
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